ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考

概要

生命科学の研究者で、遺伝子解析のベンチャー、ジーンクエストを起業した著者が、著者が考える希望に満ちた自由な生き方ができるための生命科学的思考を指南。


著者 高橋祥子

“ジ-ンクエスト代表取締役。2010年京都大学農学部卒業。2013年東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命科学専攻博士過程在学中に、遺伝子解析の研究を推進し、正しい活用を広めることを目指すジーンクエストを起業。2015年同学博士課程修了。2018年株式会社ユーグレナ執行役員就任。”

著者は、遺伝子の研究をされて、ベンチャーを起業された方です。

メディアなどでもとりあげられているので、ご存じの方も多いと思います。

『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』目次

 

第1章 生命に共通する原則とは何か -客観的に捉える-

 

第2章 生命原則に抗い、自由に生きる -主観を活かす-

 

第3章 一度きりの人生をどう生きるか -個人への応用-

 

第4章 予測不能な未来へ向け組織を存続させるには -経営・ビジネスへの応用-

 

第5章 生命としての人類はどう未来を生きるのか

 

この本から学べること

 

「生命科学的思考」というタイトルから興味深くて、思わず買ってしまいました。生き物にかかわる者としても、なるほど!と納得できるところがたくさんあります。著者は、遺伝子の研究者なので、「生命とは何か?」といった哲学的な思考がより強い気がしました。

 

著者が主張したい感じたのは、

  • 生命原則を理解した上で、主観を活かそう

ということです。「生命原則」が何かというと、

"基本的にすべての生命活動には「個体として生き残り、種が繁栄するために行動する」という共通の原則が関係しています。たとえば、食欲や睡眠欲は個体として生き残るため、性欲は種として繁栄していくのに必要不可欠なものです。そのため、その仕組みがあること自体を否定した行動を起こしても意味がなく、不具合が生じるだけです。日常生活を送る上で、食欲や睡眠欲をコントロールしたい場合も、その根源的な欲求を否定するのではなく、性質を理解したうえでうまく付き合っていく必要があります。"

人はみんな、「個体として生き残り、種が繁栄するために行動する」ようにできています。おなかがすいたりことだけでなく、怒りや恐怖といった感情も、この生命原則にそっています。ただ、社会がすごい速さで変化したため、進化の過程で人が形成した、このような性質が、うまく機能しないこともあります。例えば、食べ物が豊富な現在に、食欲にまかせておいしいものを食べていると、食べ過ぎて成人病になってしまうようなことです。機能している部分と、うまく機能しない部分を理解して、みずから思考して行動しよう、と提案しています。 著者は、生命科学を、人の「取り扱い説明書」としても使えると考えているようです。

 

私自身が印象に残ったところをピックアップすると

感情について

"個人の持つ感情についても、直接の要因だけでなく、それがどのような生物学的な意味をもつのか考えることで、より深く理解することができます。

たとえば、他人に対して怒りを覚えてしまうのは、自分の敵に対応するためであり、孤独感は人と集団で生活することで生き延びてきた人類が、一人で生きることを避けるための機能です。こうした感情は、生きていく上での危険を察知し、その危険から離れたり排除したりするために必要な機能として存在します。ですから、こうした感情を抱いたときは、「自分が感じている」というよりも、「遺伝子に搭載された機能が正常に働いている」と客観視するように心掛けています。"

感情を抱いたときに、どうして、この感情が沸き上がるのかを俯瞰して、思考してから行動するということでしょう。

生命科学的に考えると、必然的に、よりよい人間関係をつくるためのアンガーマネジメントにも共通してくるように思いました。著者が出演する番組をみたとき、冷静で論理的な印象だったのは、こうした考え方によるのでしょう。

時間について

 "時間は、自分という単一の変化のみでは存在できず、環境など複数の変化があることで初めて存在し認識し得るものである、と。二次元における距離の概念が一点ではなく二点以上存在することで初めて成り立つように、「二つ以上の異なる性質の変化」を比較することで初めて時間を認識できる、ということです。"

そのうえで、地球の自転など「自然の変化」、経済などの「環境変化」、自分自身の活動の「行動変化」、年齢など「生命変化」の4つを変化量を比較することで、

"「年齢のわりに若く見えるね」という会話をしたときには、自然変化を基準にして生命変化の変化量が平均より低いという捉え方をしている、と言い換えることができます。"

時間の変化を客観的に理解する見方を示してくれています。

企業について

”未来に何が生き残るのかを現在の時点で見通すのは困難であり、遠い未来になればなるほど予測の難易度は上がります。だからこそ、生命は多様性を作ることにより、未来の生存確率を上げているのです。失敗許容主義は、短期的に見ると非効率な戦略に見えますが、長期的には効率のよい戦略となります。

ここにも、企業が生き残る戦略のヒントがあると考えています。

これほど世の中が素早く変化する環境において、目先の利益のみに着目すれば、環境の変化によって途端に商品が売れなくなってしまう可能性も大きく存在します。そのとき、環境が変わってから適応しようとしても後手に回ってしまうため、新しい試みは環境が変化する前提で日常的に行うことが求められます。”

環境の変化が激しい現在、失敗を許容して、新しいことに挑戦することは、企業が生き残るために必要としています。環境の変化が激しいからこそ、新しい環境に適応できる新しい考え方、新しい企画、新しい商品を生み出していく必要があるということでしょう。

主観について

"そもそも、なぜ課題は存在するのでしょうか。もし、現状に満足していれば、課題は存在しえません。たとえば、世界に存在する飢餓という課題ですが、人類が誕生してから現在まで飢餓に苦しむ人が一人もいないという状況になった瞬間は、一度もありません。飢餓があるということ自体を自明のことと受け入れてしまうこともできるのに、それでもなお課題だと認識するのは、そうではない、飢えに苦しむ人を願う主観的な心があるからです。"

たしかに、課題があると思うのは、無意識でも、何か理想のイメージがあるということです。

"自分の主観を見つけるためには、自分は何に興味があるのか、何が好きで、どんな未来を目指したいのか、ひたすら思考し、行動することが必要となります。そもそも思考というのは、生物学的には多くのエネルギーを消費する行為です。すでに触れましたがエネルギー効率を考えれば、生物は(思考しなくてよい環境であれば)極力思考しないことを無意識に選択します。"

わたし自身も、考えるのは疲れるので、「もういいよ~」と思考停止しまうこともありますが、生理的欲求を超えて何かを実現していくためには、自分の主観で思考し続けることが必要ということでしょう。そして、思考した未来のイメージと現状との差分が、それを埋めていこうとする行動につながるとしています。

生命科学について

"かつては人工的だとして忌避されたものでも、現代では当たり前のように受け入れられているものは多くあります。生命科学の分野では、対外受精が良い例です。

~中略~

小学生の1クラスがおおよそ30人だとすると、1クラスに1人か2人は体外受精で生まれた子どもがいることになり、さほど珍しいわけではありません。

体外受精と同じように、ゲノム編集も自然か人工かという二分法で考えられるものではなく、テクノロジーの進化によって段階的に人々に浸透していくのは避けられないと考えます。ならば、どううまく付き合っていくか、という話こそが重要になってきます。"

としています。体外受精は、特殊な例と思っていましたが、現在は、かなり普及しているようです。ゲノム編集も試行錯誤しながら、社会に広がっていくのだと感じました。

 

本書では、自然に還るのを正しいと考えるエコロジーでなく、「生命原則」を考えながらもテクノロジーを取り入れ、新しい未来を創っていくという、研究者としての姿勢が伝わってきます。わたしたちも、著者の考え方に学べるところがたくさんあると思いました。企業、社会、生き方、人生など、大きなテーマに興味がある方は、著者の「生命科学的思考」にふれてみるのはおすすめです。

 

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